笠盛人の日第10回—勉強すき、の3

その上で、私がご提案したいのは

アンテナを張る

ということです。アンテナとは、世の中で起きていることを自分の中に取り入れるための窓口です。このアンテナをいつも高く張って、出来るだけ沢山の情報を採り入れるようにしたいのです。言い換えれば、新しいことを知りたい、という好奇心を持ち続けたいのです。

言葉を覚え始めた子どもが頻繁に口にするのは

「これ何?」

「あれ何?」

英語で言えば

“What’ this?”

“What’s that?”

です。お子さんをお持ちの方は経験があるはずです。そうなのです、生まれ落ちたばかりの子どもは自分の周りにあるものを知りたくて仕方がない、好奇心の固まりです。

それなのに、さて、私たちの年代になるとどうでしょう?

「知るべきことは知り尽くした。もういい」

という怠惰さに安住しているのではないでしょうか?

何かもったいなくありません? 世の中には、知れば人生も仕事も、もっと楽しくなり、有意義になる知識が沢山あります。幼児のときはみんなが持っていた「好奇心」を取り戻し、アンテナを最高感度にセットして貪欲に情報を集めませんか?

勉強嫌いだった私も、

「それが勉強なら楽しそうだ」

と思えてきました。皆さんにもきっとご賛同頂けると思います。

さて、たくさんの情報を集める準備は整ったかと思います。しかし、それだけでは私たちの備えは万全ではありません。情報収集には落とし穴があるからです。

トランプさんがアメリカの大統領になって以降、fake newsという言葉が社会に定着しました。嘘がニュースとして流通する、ということです。トランプさんが指摘したfake newsがすべて嘘だったかどうかは不確かですが、いずれにしても、世の中に出回っている情報にも正しいものとfake informationが混じり合っています。集めた大量の情報を検証しなければ、本当に使える情報にはなりません。

検証は、もちろん正しい情報かどうか、から始まりますが、それだけには止まりません。正しい情報でも、有用・有益なものを選び出さねばなりません。いくら正しくても、有用・有益な情報がなければ、1から情報収集のやり直しです。

こうして役に立つ情報を選び出したら、次は分類、分析です。ジグソーパズルでは普通、端に来るピースを選び出し、次に残ったピースを色で分けます。それが分類、分析という作業に当たります。

ジグソーパズルはピースを分類、分析しただけでは完成しません。一つ一つのピースを間違いなく組み合わせて全体像を作るのが目的なのです。

思い出すのは、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズさんが産み出したiPodです。いまではその機能がiPhoneに吸収されたため生産が終わりましたが、いま考えても素晴らしい製品でした。音楽を持ち歩くのはソニーのウォークマンが先に実現し、その後MDなども出ましたが、持ち運べる音楽の圧倒的な多さ、飛び跳ねても音が歪まないこと、小ささ、操作系の目新しさ、どれをとっても画期的で、発売されるとすぐに大ブームになったのも頷けます。

新規性の固まりのようなiPodですが、実は技術的には新しいものは何もなく、それまであちこちで使われていた既存の技術の組合せでしかありませんでした。いってみれば、可能性としては世界中の誰でもが産み出せたはずのものだったのです。

ジョブズさんは技術情報を集め、精査し、その知識の固まりに自分の創造性を加味して既存技術を組み合わせただけでiPodを造り上げたのです。ジョブズさんの創造性が、一時的なひらめきや思いつきでないことはもちろんです。集めた情報を消化して血肉としていたから生まれたものであることはいうまでもありません。

情報は集めただけでは役に立たない。iPodの大成功はその代表例だと思います。

そして、知識にも落とし穴があることを忘れてはいけません。私たちは、自分で「知っている」と思っていることの、本当のところどれだけを知っているのでしょうか?

それを実感してもらうために、皆さんに

「セブンイレブンのロゴを描いて下さい」

とお願いしました。外に出れば、必ず目にするのがセブンイレブンです。遠くからでもあのロゴを目にすると

「ああ、セブンイレブンがあった」

とすぐに分かります。あれをローソンやファミリーマートと間違える人はいません。では、私たちはあのロゴを、本当に知っているのでしょうか?

そう問いかけると、室内が一瞬、静まりかえったような気がしました。

「セブンイレブンのロゴ? 知ってるけど、描けと言われても……」

そんな思いで戸惑ったのだと思います。

もちろん、ロゴを正確に描けた人はいませんでした。それは予想できたことでした。実は、私の狙いはほかのところにあったのです。

セブンイレブンのロゴは、「7」と「ELEVEn」を組み合わせたものです。最後の文字は小文字の「n」なのですが、ロゴでは大文字と小文字が同じ大きさになっているため、「n」が小文字であることに気がつく人はほとんどいません。

ついでにいえば、セブンイレブンの親会社である「セブン&アイ・ホールディングス」はどう表記されているかご存知ですか?

「SEVEN & i HOLDINGS」

が正解です。「i」だけが小文字になっているのがミソです。ご存知でしたか?

勉強とは何か、から始まった私の説明は、勉強が必要な理由、勉強の仕方、勉強するうえでの留意点、まで進みました。これで座学は終わり。あとはワークショップです。

ABOUT US
笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)