笠盛人の日第9回—主体性、の2

参考にしたのは、「7つの習慣—成功には原則があった!—」(スティーブン・R・コヴィー著、キング・ベアー出版)という本です。1989年に出版されて以来44カ国語に翻訳され、世界で3000万部を売り上げたというお化けのような本です。ビジネス書として扱われることが多いのですが、成功哲学、人生哲学としても読めます。

コヴィーさんはこの本で、成功に至る道を7つの習慣にまとめています。アメリカ建国以来、「成功」について書かれた文献を徹底的に調べた結果、直近50年に書かれたものは、コミュニケーションの技やポジティブシンキングなど、上辺だけの応急処置的なテクニックの解説に終始するものがほとんどだったことにコヴィーさんは驚きました。それまでの150年に書かれたものは、誠意、謙虚、勇気、正義、忍耐、勤勉、節制、黄金律といった、変わることのない「原則」が成功の条件として取り上げられていたからです。時代が軽薄になってきたということでしょうか。

コヴィーさんは迷わず「原則」をとりました。上辺のテクニックはすぐに使えなくなるのに対し、「原則」は時代がどう変わっても通用するものだからです。そして、実行すれば誰でも成功することが出来る「7つの習慣」にまとめたのです。

その1番目、いわば成功に至る最初の扉、第1の習慣が

「主体性を発揮する」

ことなのです。2番目以降の習慣には、この第1の習慣を身につけなければ進めません。成功するために最初に自分のものとしなければならないのが「主体性」なのです。「主体性」を学ぼうという私たちには必読書ともいえます。

勉強会のレジュメでは、この本の「主体性」に関係する部分をまとめました。

コヴィーさんは人の一生を3つの段階に分けます。「依存」「自律」「相互依存」です。生まれ落ちたばかりの赤ん坊は誰かに「依存」しなければ生きてはいけません。しかし、成長するに従って肉体的、経済的、知的、精神的に「自立」します。人間の成長はそこで終わりではありません。やがて社会は複雑な「相互依存」関係で成り立っていることを知り、自分もその一翼を担うようになって円熟するのです。

こうした成長の過程で、「主体性を発揮する」とは、「依存」の状態から、「自立」に向かう第1歩と位置づけられています。だから第1の習慣なのです。

私たちはすでに大人です。コヴィーさんの成長段階説に従えば、「自立」し、ひょっとしたら「相互依存」の段階まで進んでいなければならない年代かも知れません。

しかし、私たちは本当に「自立」しているでしょうか? 自立の最初のステップである「主体性」を発揮しているでしょうか?

そんな疑問に、コヴィーさんは

「あなたたちは社会通念に毒されて、自主性を発揮できていないのではないか?」

と問い返しています。

例えば、人間の性質や行動を説明するのに3つの決定論が使われることがよくあります。家系や遺伝子によって人は決まるという「遺伝子決定論」、親の育て方で決まるという「心理学的決定論」、上司、妻、子ども、経済、国政など自分を取り巻くものに原因を求める「環境決定論」の3つです。

しかし、そんなもので人間の性質、行動が決まるとすれば私たちは無力です。特定の刺激に特定の反応を返すことを条件付けられているだけのパブロフの犬に過ぎません。人間とはそれだけのものでしかないのか? 私たちは3つの決定論で運命づけられているのだろうか?

コヴィーさんは、人間とはそんなに安っぽいものではないといいます。人間とは、刺激と反応の間に「選択の自由」を持っている。Aという刺激を受けたとき、Xという反応をするのか、Yを選択するのか、それともZを打ち返すのか。どれを選ぶかはその人に任されており、人間だけが持つ「自覚」「想像力」「良心」「自由意志」という独特な性質が働くのだというのです。

私たちの行動は周りの状況から自動的に決まるのではなく、刺激と反応の間にある自分の選択で決まること、それが

「主体性を発揮する」

ということだとコヴィーさんはいうのです。

だから、主体性を発揮するということは、自分の反応に、大きくいえば人生に責任を持つことでもあります。英語で責任をResponsibilityといいますが、この言葉はResponse(反応)とability(能力)の合成語です。反応する能力が責任を形作るのです。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)