それが…
「来ないね」
「誰も来ませんね」
初日午前中の大騒動が一段落すると、何故か客足はバッタリと途切れました。お昼になっても、午後になっても、翌日になっても、文字通り、誰も来ないのです。ブース前の通路を行き交う人はたくさんいるのですが、何故か私たちのブースには視線を投げてもくれません。せっかく一番目立つところに置いているはずの、「ビップ・プロダクツ」の楯も、何の役にもたっていないようです。
通訳を入れて四人でじっとブースに座って来客を待っている。誰も来てくれないのですから、何もすることがありません。退屈です。時間をもてあまします。小人閑居して不善を為す、とか。私たちが小人であることは間違いありません。それでも、まさか不善を為すところまでは至りませんでしたが、退屈しのぎを始めました。隣のブースにいた若い女の子に声をかけて仲良くなり
「これ、アイスランドから来たバイヤーに50着売れたボレロなんだけど、君、着てみない? きっと似合うよ」
などと言いながらボレロを着せかけて写真を撮ったりしてふざけていました。
しかし、所詮、暇つぶしです。長くは持ちません。それに、私たちは「笠盛」がこれから展開しようとしている国際戦略の第一歩として、大枚をはたいてパリに乗り込んでいるのです。ふざけて時間つぶしばかりやっていたのでは来た意味がなくなります。
何とか、この「笠盛」のブースに人を招き入れねばならない。「モーダモン」の主催者も認めた「笠盛」の優れた技術力、デザイン力を1人でも多くのバイヤー、デザイナーに知ってもらわなければならない。私たちはあれこれ知恵を絞りました。
「モーダモン」の主催者が作ったルールでは、会場内での客引きは禁止されています。ですから、ブースの前を通り過ぎる人たちに露骨に声をかけるわけにはいきません。
しかし、何らかの手立てはあるはずだ。私は通訳の方にお願いし、ルールブックをもう一度翻訳してもらいました。それを聞くうちに、ふとひらめきました。
「これ、このルールブック、会場内でパンフレットを配ってはいけないとは、どこにも書いてないですよね?」
通訳の方はもう一度ルールブックを詳細に読み直し、
「書いてありません」
と確認してくれました。 やっぱり手立てはあった! それが分かると、私たちは一人だけ店番に残して、ブースに来たお客様のために用意していた商品パンフレットを会場内で配り始めました。

1948年3月18日生まれ
好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分)
嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分)
得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分)
苦手:指相撲、妻(多分)
似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)

















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