本に間に合わなかったこと その4

人間とは、ある目標に固執すると、その目標につながる材料ばかり集めてしまう癖があります。欲しい結論を何とか手に入れるため、邪魔になるデータを無視する、あるいは目の前にあるのに気がつかない、ということは日常生活でも時折あります。視野を広く持ち、あらゆるデータを集めた中から判断を下さねばならない経営者は

「このデータは客観的か?」

と常に自問しなければなりません。私も経営者の端くれですからその意識は常に持っていると思っていますが、ひょっとしたら今回のルーツ探しでは結論を急ぎすぎ、経営者としては失格の烙印を押されかねない判断をしているのかも知れません。

それは重々自覚してはいるのですが、岩瀬吉兵衛、笠原吉郎につながる細い糸を手に入れたような嬉しさを感じているのも事実です。

その嬉しさと、桐生が産み出した偉人を皆様にも知っていただきたいという思いから、根拠がはっきりしないことを書き残しておきたくなりました。お目汚しになってしまったかも知れません。お許し下さい。

「笠盛」と笠原の家のルーツを知りたいと私が思うのは、知らず知らずのうちに目が過去に向く年代に足を踏み込んだからかも知れません。その意味では私も過去人間になったという自覚があり、「笠盛」の経営の一線からは退きました。

「笠盛」はいま、私の後任である桜井理社長の下で未来志向の経営を続けています。「笠盛」は決して過去の遺物にはなりません。先人たちが築き上げた歴史を踏み台に、常に明日に向かって歩を進める「笠盛」を、これまでにも増してよろしくお願いします。