こんにちは。営業部長の新井大樹です。
私たちは2回連続で、「教え上手・学び上手」をテーマに取り上げました。「笠盛」が企業である以上、人の入れ替わりは避けられません。だから、「笠盛」が企業として生きていくためには技を含めた伝承が必要です。それがこのテーマを連続して取り上げた理由でした。
みなさん、それぞれに学んでいただいたと思いますが、今回はあと一押しすることにしました。伝承で大きな役割を果たすOJT(On The Job Training)、つまり仕事をしながら技を伝える実例を通して「教え上手・学び上手」を考えてみようと思い立ったのです。
まず皆さんに、ひとつの文章を読んでももらいました。ある企業で起きたOJTの失敗例です。この文章を手がかりに、「教え上手・学び上手」を再考するのが狙いです。
そこで、これをお読みいただいている皆様にも、まずこの文章をお読みいただきます。少々長いのですが、お付き合いください。
教える気がある?鬼のいぬ間のOJT
当時、地方の営業拠点の事務をしていました。所長含め営業が10人、そして3つ上の先輩のAさんと私の2人が営業所の事務一切を行っていました。
業務量が増えたため、経験者を採用することになり、入ってきたのがBさんです。Aさんとは1つしか年齢が違わない新人です。私にとっては2つ年上の後輩になります。
AさんがOJTリーダーとして指導にあたったのですが、AさんのBさんに対するあたりがかなりきついのです。
Bさんは、前職は大手企業で事務をしていたので、みな即戦力のつもりでいたのですが、期待通りにはいかないものです。
少々要領の悪いBさんは、Aさんのようにマルチタスクで仕事をさばくのは苦手のようでした。大手で部分を担当するのと、小さな営業所で何でもやらないといけないのとでは、だいぶ勝手も違ったのかもしれません。
私たちは、これでようやく楽になると思っていたのに、逆にやることが増えて大変になってしまいました。
Aさんはそつなくテキパキと仕事をこなす人なので、Bさんにイラつく気持ちはよく理解できます。
最初のうちは、私もAさんのグチにつきあっていました。
「まったく、前職で何してたのかな、あんなペースじゃとってもやってらんないよねー」などというグチに
「そうですね、かえって大変になっちゃいましたね」
なんて調子を合わせていたのですが、だんだんとBさんのことが気の毒になってきました。
「いやいや、だから違うって」
「さっきも言ったよね」
「どうしてそうなるの?」
「前の会社でやってたんだよね?」
「キャリアがあるんだからこれくらいわかるよね」
「なんでわかんないの?」
「間に合わないじゃない」
「あー、もういいよ、私やるから」
OJTをしていても、最後のほうはいつもそんな調子でしめくくるのです。
契約や請求の処理などは間違いがあると大変なことになるため、ある程度の厳しさは仕方ないとも思ったのですが、それにしても毎回毎回これではさすがにBさんもかわいそう。おどおどしてますますミスが増え、日に日に元気がなくなるのがわかります。
これはもしかしてモラハラってやつではないだろうか……。
ふとそうよぎったりもしたのですが、しかし先輩にそんなこととても箴言できません。
AさんがBさんをOJTしている間、実務をこなすのは私しかおらず、自分の処理で手いっぱいだったということもあります。
営業や所長も日中はいないことが多く、いても事務の私たちの様子を気にかけることなどありません。いや、もしかすると皆わかっていたのに、忙しいフリをして見ないようにしていたのかもしれません。
さすがにBさんのことが心配になってきて、こっそり手伝ったり、Aさんに聞けないでいることを教えてあげたりしましたが、あまり助けるとAさんが不機嫌になってしまいます。
「自分でやれるようにならないと意味ないんだから、下手な助け船は出さないで!」
そう釘をさされてしまいました。
(そうはいっても、Aさんの説明じゃ無理だろうなぁ。結局最後はAさんが自分でやっちゃうし……)
ある日、Bさんが
「Aさん、この契約の処理がわからないんですけど……」
とおどおどした声でAさんにたずねると
Aさんは、
「だからここをこうしてああして、○○の契約は××だから▽▽でしょ。審査部に確認すればわかるでしょ?」
との回答。
そう言われてBさんは
「……わかりました」としょんぼり自分の席に戻りました。質問する前よりも混乱している様子です。
このとき、なんとなくわかりました。AさんはBさんに教えようとしていないことを。
「仕事もたまっているのに、そのうえOJTだなんてホント大変!」
といつも嘆くAさんに、確かに大変だなぁとも思っていたのですが、どうもAさんは教えているようで教えていないのです。
少なくとも、Bさんにわからせようと思っていないことは確かです。特にAさん自身が不得手な分野のことだと、専門用語を早口でまくしたてて、相手が何も言えなくなるようにするのです。Aさんが「Bさんはなんでいつまでたっても覚えないの?」と嘆くのは、AさんがBさんに教えようとしていないからだ、と合点がいきました。
でも、もしそんなことを言ったら、Aさんは全力で否定するでしょう。「私がこんなに一所懸命に指導してるのに!」と。
Aさんが席を外したすきに、
「Bさん、さっきの件は審査部の○○さんに確認するといいですよ」
とこっそり耳打ちするしか私にはできませんでした。
所長に言うべきか、でも所長は
「なんとかうまくやってよ」
とか、せいぜい
「Aさん、もっと丁寧に教えてあげてよ」
などと意味のないアドバイスするのが関の山だと想像できます。
Aさんが休んだ日は、できるだけBさんに教える時間をとりました。鬼のいぬ間のOJTです。Bさんも相当ストレスがたまっているらしく、「私がぐずだからいけないんだけど……」と前置きしつつ切々と辛さを訴えてきました。でも力及ばず、しばらくしてBさんは退職しました。
「所長ー、今度はちゃんと仕事できる人採ってくださいよー」
と笑いながら話すAさんの言葉を、背中で苦々しく聞きながら、私はただ黙っているしかありませんでした。
あの当時は、まだOJTの現場を側で見られるので、私も多少はサポートできたけど、今だったらオンラインでの指導になるのでしょうか。
1対1の画面越しであれをやられたら、と想像するとぞっとします。様子がわからないと周囲の人も手の出しようがありません。
それを思えば、
「自分なりに目配りしてサポートはした」
と思える部分はあります。しかし
「やれることはもっとあったのかもしれない」
というもやもやした気持ちも残っています。
出典:ナビゲート有限会社(Navigate, Inc.)
OJT体験談より
https://www.navigate-inc.co.jp/ojt/case/question/004819.html

1948年3月18日生まれ
好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分)
嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分)
得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分)
苦手:指相撲、妻(多分)
似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)
















