考えに考えた片倉君が行き着いたのは、
「世界という市場の反応をビビッドに知ることができたことではないか」
ということでした。
片倉君は2つの視点で、「笠盛」の展示品に向けられるバイヤーたちの反応を見ていたといいます。
・「笠盛」の商品に競争力はあるか
・「笠盛」の商品に競争相手はいるか
です。
5日間、彼は私たちのブースを訪れてくれたバイヤーたちの相手をしていただけではありませんでした。ブースが暇だと見ると、毎日会場を歩き回り、あらゆるブースをのぞいていたのです。
彼がつぶさに見たところ、「笠盛」と同じようなケミカル刺繍の製品を、「笠盛」と同じ手法で造っている企業は一社もありませんでした。つまり、片倉君が造り出したふんわり感のあるケミカル刺繍に似たものは1つもなかったのです。
片倉君が手がけたふんわり感のあるケミカル刺繍は
世界でオンリー・ワンの製品
だったのです。そうであれば、片倉君が進もうとしているふんわり感のあるケミカル刺繍製品に競争相手はなさそうです。つまり、育て方によってはオンリー・ワンの商品にすることができるのではないか?
それに、片倉君のふんわり感のあるケミカル刺繍製品は、思ってもみなかった「ビップ・プロダクツ」に選ばれました。この自信は大きいものでした。「笠盛」の技術力、デザイン力が世界のトップグループにあると国際的な展示会で認定されたのです。
だから、一歩を踏み出したばかりのこの製品は育て続けよう。いつかはきっと大化けしてくれるはずだ。
オンリー・ワンであり、高い評価を受ける製品なら、必ず世界中に通用する商品になるはずです。
それなのに、なぜ受注がはかばかしくなかったのだろう?
片倉君が見たところ、「KASAMORI LACE」へのバイヤーたちの反応は、好き、嫌いにはっきり2分していました。ということは、万人に好まれるデザインにはなっていなかったということです。それに、値付けが少し高すぎたかもしれない、と考えました。
そこまで分析して、片倉君は、ここが出発点だとすれば、これから「笠盛」の選ぶべき道は何か? と模索してみたといいます。
いくら技術力、デザイン力でトップグループにいても、最後は消費者に好まれなければ商品にはなりません。好き、嫌いがはっきり分かれた今回の出展製品は、ニッチマーケット向けともいえるでしょう。
もちろん、この路線を追いかけて、万人向けではなく、少数の熱狂的なファンを持つ製品に育てるのも一つの方向です。しかし、どう育てたら、そんな人たちをもっと強く引きつけることができるのか。それに、ニッチマーケットの動向を予測することは不可能に近いことです。ある日起きてみたら消費者の好みが一変して市場が消えていた、という危険もあります。
「笠盛」はそんな方向に社運をかけるべきなのか?
片倉君の思いは千々に乱れました。どうやらすぐに結論が出る問題ではないらしいとあきらめ、片倉君は再び3人の話の輪に戻ってきました。
でも頭のどこかでは、まだ姿も形も見えない、「これから自分が作る製品」のコンセプトが、星雲のようにグルグルと回り続けていたそうです。

1948年3月18日生まれ
好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分)
嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分)
得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分)
苦手:指相撲、妻(多分)
似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)

















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