笠盛人の日 第4回—言葉の達人、の2

私の見るところ、「笠盛」社内でも、「言葉」が原因になった問題が時折起きていました。ダラダラ話が長い。逆に言葉が短すぎて真意が伝わらない。ダラダラした話には、聞く方が苛立ちます。短すぎて何を言われたのか分からないのでは、仕事に差し障ります。言った、言わないという行き違いも起き、それが高じてくると人間関係にまで影響が出てギスギスした空気が漂います。何とかしなければ、とは常日頃考えていることでした。みんなが

「言葉の達人」

になることができれば、こうした問題を解消でき、「笠盛」はいつも生き生きした、効率的で明るい会社になるはずです。

さて、では「笠盛人の日」で何をすればそんな会社になれるのか。ワークショップ方式でやろうとまでは考えていたのですが、みんなを「言葉の達人」に育てるワークショップとは、何をどうすることなのか?

前日まで迷いに迷いました。結局、幹部会で話合い、3分間スピーチをすることにしました。全員に3分間のショートスピーチをやってもらう。

しかし、突然3分間のスピーチをしろといわれたら、みんな迷ってしまうでしょう。ここはスピーチのテーマを決めなければなりません。でも、どんなテーマならみんなは話せるのか? これも甲論乙駁でなかなか結論が出ません。

「よし、うどんとソースカツ丼にしよう!」

と言ったのは、確か笠原会長でした。櫻井社長も

「うん、それがいい」

同調しました。

うどんとソースカツ丼は桐生名物とも言われる食べ物です。これならみんな幼い頃から親しんでいるので、何か話すことはあるだろう、ということだったのだと思います。

しかしねえ、うどんとソースカツ丼について何を話す? と疑問を感じなかったわけではありませんが、私にも他に適当なアイデアがなく、これに乗っかりました。

「今日は全員に3分間スピーチをしてもらいます」

と司会の私が口にした時、会場を一瞬の沈黙が満たしました。言葉にすれば、おいおい、いったい何をやらせる気だ? そんなことやりたくないよ、とでもなりそうな沈黙でした。

それは無視して私は説明を続けました。

全体を5つの班に分け、各グループ内で全員が3分間スピーチを2回します。3分間にしたのはダラダラした話を避けるためです。それに、「笠盛」には会議に遅れたり、約束の時間に来なかったりなど時間を守らない人が結構います。この際、時間を守ることの大切さも身につけて欲しいとも思いました。

テーマは「うどん」「ソースカツ丼」のどちらかです。自由に選んで下さい。選んだ桐生名物の魅力を3分間ピッタリでグループの仲間に伝えて下さい。聞いている人は何が伝わってきたか、良かった点、感動した点などをメモし、話した人に1分間で伝えることにします。

3分間のスピーチとは、400字詰め原稿用紙にすれば2枚分ぐらいの分量になります。伝えたいことを明瞭にし、結論から話すとわかり易いスピーチになります。

それでは始めて下さい。

自分の知っている美味しい店の話をする人がいました。桐生でうどんが名物になったのは、小麦を沢山作っている群馬県の地産地消だろう、という人もいました。自分にとってハレの日にはうどんを食べる、という話もありました。

しかし、3分間も話せる人は本当に希でした。多くは2分もしゃべれず、あとは沈黙。

「ハードルが高かったみたいだなあ」

というのが私の正直な感想でした。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)