笠盛人の日 第5回—感謝の言葉を伝える、の2

とはいえ、「笠盛人の日」は社内の勉強会です。道徳の授業ではありません。社内の勉強会だから、仕事との関係を考えなければなりません。

私はGoogleで「社会人 感謝」、「仕事 感謝」などの言葉を入れて検索しました、社会的に成功した偉人の言葉が多数出て来ましたが、驚いたことに、松下電器、いまのパナソニックの創業者、松下幸之助さんの言葉が大半でした。やはり、あれほどの偉業を成し遂げるには、単に脇目も振らずに働くだけは足りず、世のため人のためになるには自らを高めなければならないという強い信念と、その信念に周りを引き入れていく言葉を産み出すことが必要だったということでしょうか。

心惹かれる言葉が沢山ありましたが、私は次の一文を選び、みんなに紹介しました。

一人の人間が生かされてゆくためには、直接間接に多くの人々の協力、助力がいる。つまり、われわれが今日こうして生きていられるのは、自分一人の力ではない、世の多くの人びとのおかげがあればこそである。
それに気づいて感謝の心を持つかどうか。それができる人こそ、ほんとうに豊かな心の持ち主といえるであろう。
(松下幸之助「思うまま」より)

私が必死に考えたことを、たったこれだけの短い文章で実に明瞭に表してあります。やっぱり、松下幸之助さんは凄い人です。

この松下幸之助さんの言葉で関心を惹かれたのは「直接間接」という言葉でした。直接の協力、助力に感謝するのはある意味で当たり前です。「笠盛」の「サンクスカード」も、私がやろうとしいてた「笠盛人の日 第5回」も、直接お世話になったことへの感謝しか考えていませんでした。

でも、「間接」の協力、助力って何だろう? 松下幸之助さんは何を言いたかったのか? ああれこれ考えているうちに、

「そうか!」

と思い当たりました。

これまで、私たちがお世話になっていると認識していたのは会社の仲間、パートさん、外注先、取引先、ミシン屋さんなど、直接お会いしてお世話になる方々がほとんどでした。それから外れるといえば、お会いしたこともないお客様、地域社会の方々ぐらいまでしか私たちの想像力は及んでいませんでした。

しかし、考えてみると、私たちがお世話になっている方々はもっと沢山いらっしゃいます。日常的に使う刺繍糸だけ考えても、糸の原料になる綿花や蚕を生産する農家の方々、それを糸に紡ぐ紡績会社の皆さん、化学繊維を製造する工場の皆さん、経営者の方々、できた糸をを運んで下さる運送屋さん、糸を染める染色屋さんなど、一度もお目にかかったことがない人たちがいて下さって初めて、「笠盛」は刺繍糸を使うことができるのです。事務所の設備、工場のミシンなど、「笠盛」になくてはならないもの総てに範囲を広げれば、私たちが知らないところで私たちに協力、助力して下さっている方々の数は膨大になります。また、生きていかねば仕事はできません。私たちを生かしてくれている食べ物、服、住居、交通手段、教育……。

私たちの仕事は、天文学的な数の人達の協力、助力があって初めて成り立っていることに気が付きました。

「駕籠に乗る人担ぐ人。そのまた草鞋を作る人」

といいます。駕籠に乗ったら、草鞋を作ってくれた人への感謝を忘れてはならないのです。そこまで目が届くようになれば、私たちの感謝の心は見違えるように大きくなるのではないでしょうか。

松下幸之助さんの言葉は、私に多くのことを考えさてくれました。

ABOUT US
笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)