「笠盛」の履歴書 — その28 順風満帆

 私には天の邪鬼なところがあり、設備投資は景気が悪いときにやる、景気が良くなったら設備投資を抑え、今あるミシンをフル稼働させる、という、普通とは逆の方針を採ってきました。それがこの時はピタリと当たったのです。多分、他の刺繍屋さんは石油危機後の不況で設備投資を抑え、あるいは設備を減らしていたのでしょう。だから、APブームが起きて注文が急増しても対応できない。一方、この日を見通していた訳ではありませんが、「笠盛」のミシン台数は増えており、ゆとりがあります。だから急な注文でも対応でき、それが信頼に繋がって次から次に注文がやってくる、という理想的な流れが出来たのだと思います。

 しかし、ミシンだけでは刺繍は出来ません。ミシンを操作する人がいります。それまでの社員だけでは手が回らなくなると、中途採用を始めました。即戦力を求めたのです。私が戻ったとき7、8人しかいなかった社員は、すぐに12、3人に増え、間もなく20人弱になりました。それでもさばききれない注文は、協力工場に回しました。

 我が世の春、とはあんなことを言うのでしょう。悪いときは5000万円程度にまで落ち込んでいた1年間の売り上げが、1億2、3000万円にまで増えたのです。

 私が社長に就任したのは昭和59年(1984年)です。勢いがついた事業は順風満帆の歩みを続け、売り上げは1996年、3億5000万円にも達しました。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)