「笠盛」の履歴書 — その25 駆け出し

 ずっと続いてきた取引先は、ほぼ壊滅状態です。受注量は前年から半減。「笠盛」が生き延びるには新しい注文が何としてでも必要です。

 既存の取引先が総崩れに近い状態です。やむなく私は飛び込み営業を始めました。これまで取引実績のない会社に、いってみれば押しかけ営業をするのです。

 商工名鑑を開き、東京、長野、山形で、刺繍の仕事がありそうな7、80社を選び出しました。アパレルメーカーや問屋、それに地方の下請け工場です。事前にアポイントなんて取れませんので、サンプルを持って乗り込みます。

「桐生の『笠盛』と申します。今日は我が社の刺繍のサンプルをお持ちしました。見ていただくだけでも結構です。ご担当者様にお目にかかれないでしょうか」

 朝七時前に家を出ます。桐生に戻るのは最終便です。電車を乗り継ぎ、バスを乗り継ぎ、そして文字通り、足を棒にして歩き回りました。しかし、ほぼ全滅です。東京の会社はほとんど、受付で門前払いされました。地方の会社はサンプルを見るだけは見てくれるところが多いのですが商談には踏み込めません。ホンのたまに注文をくれるところもありましたが、仕事が来ても1回限りであとが続きません。棒になった足が悲鳴を上げそうな結果です。

ABOUT US
笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)