その7 KASAMORI LACE

 何度も話し合いを続けました。行き着いたのは、自分の強みを発揮するしかない、という常識極まるものでした。「笠盛」の刺繍技術の粋を凝らし、どこにもないものを出す、です。

「刺繍を使ったレース調の生地」

 という「KASAMORI LACE」を出すことに決めました。編んで作った刺繍、これまでのレースとは違う唯一のレース、ともいえます。レースの本場、ヨーロッパで「笠盛」の独自性を出すにはこれしかない。ふんわりと柔らかく、おばあちゃんの手編みのレースを思い出させるような風合いを出せるよう、もっと洗練しよう。あわせて服飾パーツの新作を作る。これが片倉君のテーマでした。知人の奥さんはボレロ(スペイン風の短いジャケット)を提案し、デザインまで引き受けてくれました。

 そして、

 ・これまで日本にはなかったものを創り出す

 ・オーガニック素材にこだわる

 ・日本の味を活かす草木染めを使う

 をコンセプトに決めました。

 それで万事解決かというと、とんでもありません。何度も話し合ってまとめた結論を実際に形にする作業はここから始まるのです。

 製作作業は難行苦行の連続でした。

 いちばん泣かされたのは糸切れです。機械で刺繍を縫うと、縫う過程で糸が細くなるところが出てきます。何度も針が通ったところです。刺繍が仕上がると一度洗うのですが、洗い上がると天然素材なので縮みます。縮む時、糸が細くなった部分で切れ、切れ端が表面に出て毛羽になってしまったのです。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)