「笠盛」の履歴書 — その8 ヤシが来る!

 従業員はほぼ全員を解雇するしかなくなりました。家族だけでの経営を始めるしか事業を続ける道がなくなったのです。盛が営業に回り、長男の勝が織機のメンテをする。次男は機織りをし、3男は経糸をそろえる整経といった具合です。借金もかさんだようです。

 そのころの盛は、毎夜のようにうなされていたといいます。

「ヤシが来る!」

 ヤシとは、債権の取り立てに来るヤクザのことです。

 取り立てに来る借金は、自分で作ったものではありません。盛は人が良く、頼まれればいろいろな書類に判子を押していました。中には保証人になる書類も数多くありました。経済がうまく回っている時は、頼まれれば2つ返事で引き受けてくれる頼もしい人、という評価に繋がりますが、昭和恐慌のような異常事態が起きれば、

「債務者が払えないのだから保証人であるお前が払え」

 ということになります。盛はこの取り立てに苦しめられたのです。だから、

 みだりに判子は押すな

 が我が家の家訓になっています。

ABOUT US
笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)