その5 てんやわんや

 話を元に戻します。八方破れを推し進めて調査対象を広げると、「モーダモン」という展示会が引っかかってきました。毎年2回、パリで開かれる世界最大の服飾資材展です。そこに行き着いたとき、秋の「モーダモン」の応募締め切りが目前に迫っていました。

 応募要項を読むと、「モーダモン」は事前審査に通らないと出展すらできません。それもかなり厳しい審査で、直前になって突然出展するなど夢のまた夢、らしいのです。パリの展示会に出る決意を固めたばかりです。もちろん準備など何もしていません。これから申し込んでも、今年の出展が認められることは望み薄だろう。でも、応募だけでもしてみよう。費用もたいしたことはない。応募して門前払いを食わされても、パリで開かれる展示会への応募書類の書き方を学べるだけでもいいではないか。

 これが「八方破れ」が行き着いた結論でした。

 その年の四月、「モーダモン」への申請書類をネットからダウンロードして申し込みました。書類に書き込んだ出展作品は「KASAMORI LACE」です。服飾のパーツになる刺繍と、刺繍で作った生地を出展することに決め、十数点のサンプルを大急ぎで造ってパリに送りました。

 それまで刺繍といえば、ファッションブランドのデザイナーが

「こんな雰囲気の刺繍を、この生地の首の部分のカーブに合わせてやって欲しい」

 などと注文を出すものでした。刺繍を施した生地は縫製屋さんに回されて洋服になります。これは刺繍屋と縫製屋が近くにあるから成り立つプロセスです。このビジネスモデルでは、日本の刺繍を海外に展開することは限りなく難しくなります。

 それを打ち破って、桐生の地から海外市場に刺繍を展開するにはどうするか。考え抜いた結論が、まず刺繍があり、デザイナーがそれを使いたくなることを目指した「KASAMORI LACE」だったのです。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)