「笠盛」の履歴書 — その11 勝の闘い

 結核を患った勝でしたが、軍事が国の中心となり、さらには敗戦の色が濃くなって、軍は猫の手も借りたくなったのでしょう。勝は2度も戦争に駆り出されました。兵隊としては、結核の病歴があったためか全く昇進せず、2度とも「二等兵」の兵隊さんのままでした。

 軍隊では、二等兵は一番下の階層です。

 新兵さんは可愛そうだね
 また寝て泣くのかよ

 という、陸軍の消灯ラッパについた替え歌があります。上官に命令され、叱られ、殴られ、やっと寝る時間になって布団に入ったら涙が流れ出した。陸軍の暴力体質と、好きでもないのに赤紙一枚で招集され、その中で殴られ続け、耐え続けなければならなかった新兵のつらさを言葉にしたものでしょう。万年二等兵だった勝は、その新兵さんのようなものでした。

 ところが、勝はそんなところで涙を流すような柔な人間ではなかったらしいのです。

 中国大陸にいた折、たまたま上官に中学の同級生がいたそうです。軍隊とは、階級が1つ違えば人間扱いしてもらえないところだったともいわれますが、勝はそんなことは頭から無視したようで、

「おい、ちょっと貸せ」

 と上官の階級章を借り出して自分の軍服につけ、町に遊びに出たといいます。兵営から外に出るために上官の階級章が必要だったのか、それとも町でいい思いをするためにそうしようとしたのかは不明ですが、いずれにしてもあとでばれてしまい、こっぴどく叱られたといっていました。勝は型破りの万年二等兵だったのかも知れません。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)