その2 七転び

 投資は、ちっぽけな「笠盛」の屋台には不釣り合いなほど巨額に上りました。失敗すれば倒産するかもしれない。しかし、「笠盛」の技術力を持ってすれば失敗のリスクは少ないはずだ。それに、このまま日本にとどまり続けることは座して死を待つようなものではないか。私たちは、一方で自信を持ちながら、他方で清水の舞台から飛び降りる覚悟で臨んだのです。

 それなのに、みごとというほかない失敗に終わりました。工場から出てくる刺繍の品質が安定しないのです。刺繍した糸が乱れて、中には表面がボコボコになった製品もありました。とても商品にはなりません。売れないものがたくさん出てくる工場には赤字が積み上がりました。必死で従業員の技術教育を続けましたが、品質の改善は歯がゆくなるほど遅々たるものでした。文化や習慣が日本とはまるで違いました。あるいは、言葉の壁によるコミュニケーションのとりにくさもあったかもしれません。投資に踏み切る前の下調べの不十分さ、当初持った見通しの甘さに地団駄を踏みましたが、どれほど地面を踏みつけても何も元には戻りません。

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 わずか四年後の2005年、私たちはインドネシアからの撤退を決断しました。格好良くいえば

「間違いを改めるに憚ることなかれ」

 ですが、有り体に言えばしっぽを巻いて逃げ出す負け犬にならざるを得なかったのです。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)