「笠盛」の履歴書 — その30 決断

 危険な臭い――まず、町が何とも暗いのです。

 それに、同行してくれた三井物産の人が

「ここでは1人で歩かないでください」

「バスには絶対に乗ってはいけません」

「歩道橋は渡らないで下さい。歩道橋の両側から迫られたら逃げ場がなくなって危険ですから」

 などと行く先行く先で話してくれるのです。私が本能的に感じた危険な臭いは、どうやら現実に存在しているのです。

「こんな所に工場を持ったらやばいぞ」

 1回目のインドネシア訪問ではそう判断して、イタバシニットへの返事は曖昧にしたまま帰国しました。

 危険な臭いをかぎ取った私は、正直な話、インドネシアに出たくはありませんでした。それでもイタバシニットは諦めません。返答を渋っていた私は拝み倒されるようにして翌1992年、再びインドネシアに出向くことになりました。

 よほど「笠盛」の協力が欲しかったのでしょう。煮え切らない返答を繰り返す私に、イタバシニットは新しい提案をご用意されていました。

ABOUT US
笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)