「笠盛」の履歴書 — その27 やっと黒字に

 小野常務が寄せてくれた好意は、まさに干天に慈雨でした。いわれた通りアパレルメーカーに足を運ぶと、2、3の工場を紹介していただくことができました。イタバシニットが強く押してくれたのに違いありません。

 紹介された先を訪ねて仕事をいただき、数回納品しているとそこでも「笠盛」の刺繍を評価していただいたようで、この紹介先がまた新しい会社を紹介してくれる、という具合で、取引先が芋づる式に増え始めたのです。

 捨てる神あれば拾う神あり、といいますが、いい加減な製品ばかりを作っていては、需要が落ち込んだときは捨てる神しかいなくなってしまいます。「笠盛」に拾ってくれる神が現れたのは、どんなときでも刺繍の品質は絶対に落とさないという社員の努力のたまものでしょう。小野常務に感謝するのはもちろん、いい社員に恵まれた幸せにも頭が下がった私でした。

 失敗もありました。新規取引先が初めて出来たときのことです。

「じゃあ、これだけお願いするよ」

 といわれて注文書を書いていただくとき、「笠盛」の受注価格を自分が知らないことに気がついたのです。この仕事、いったいいくらで受けたらいいのか。石油危機の逆風の中、とにかく注文を取らねばと無我夢中で営業を始めた私は、そんな肝心なことも確かめないまま、文字通り押っ取り刀で飛び回っていたのです。そして、回っても回っても注文が取れない日々が続いたため、自分が「笠盛」の価格を知らないことに気がつく機会がなかったのです。

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笠原 康利
1948年3月18日生まれ 好き:仕事、ワイン、落語、漫才、みんなの笑顔、家族、妻(多分) 嫌い:仕事、ホルモンのシロ=噛みきれないので、妻(多分) 得意:笑顔、プログラミング、早食い、経営(多分)、妻(多分) 苦手:指相撲、妻(多分) 似ている芸能人:藤山寬美、キムタク(多分)